マルセイユ・タロットが伝える「氏より育ち」

幼児期の重要性

フランスのみならず、古いヨーロッパ社会では大抵の家庭に乳母が召し抱えられており、子どものしつけを任されていました。

いわゆる幼児期という、1歳から小学校に入学するまでの時期の重要性を伝える札がこのアルカナです。

人はどこの誰に育てられようとも、自ずと成長し、まずは物心(ものごころ)というものを発達させます。

すなわち、分別がつくようになる、物ごとのよしあし、善悪、道理をわきまえるようになるものです。

幼児期を通過しながら、やっていいこととわるいこと、人として大切なこと、世の中の色々なことを徐々に理解していくものです。

野生の動物とは異なり、秩序ある暮らしを求め、その中でこそ安心できることを本能的に学ぶのが人間でもある。幼児期において、人はある種の本能的な知恵を発動させているのだと、ゆえに人間の本質を察知し「正しい行動」が理解できるのだと言う考え方もできるでしょう。

後述します社会的な秩序を象徴するアルカナ「教皇」とのペアリングが推奨されている「女教皇」であるという点も、マルセイユ・タロットならではの特徴で、理解の範ちゅうとなるところです。「教皇」が象徴するのは社会性という地域性によって異なる秩序とルールですが、「女教皇」が示すのはよりもっと内面的な、人間であれば国籍や時代を超えた共通の意識であり、ルールのようなものです。

いわゆる人としての「当たり前」、地域によらない人道的な、いわば人としての本能的なあらゆる国に通じる法律というものがあるでしょう。道徳と言ってもよいのでしょう。

彼女が手にしている書物は、「アカシックレコード」「秘密教義」だとも言われてきましたが、これは「全人類のための教え」で、年齢、性別、肌の色を問わず、人にとって大切な事柄が網羅されている普遍的であるはずのものです。これを伝授することが女教皇の最大の役割であり、彼女こそが宇宙の律法書なのです。

マルセイユ・タロット教室 P.27

 

親の存在次第で、スタートラインが違うとしても・・・名家に生まれたとしても、やはり「氏より育ち」。

自ずと分別をつけ、物ごとのよしあし、善悪、道理をわきまえることができるのであれば、人生のレースに何の支障があろうかと、この札はきびしいながらも温かい視線をあなたに送って出ているようなものです。

 

※「氏より育ち」ということわざ

江戸時代から使われている表現で、人の人格や能力は家柄よりも育った環境や教育によって形成されるという考え方を示しています。

この言葉が最初に登場したのは、1707年頃に作られた浄瑠璃作品『丹波与作待夜の小室節』の中で、登場人物の特徴を説明する際に使われたとされています。また、京いろはかるたにも収録されており、広く知られるようになりました。

 

このことわざの背景には、古代日本の社会構造が関係しています。かつては家柄や氏族が重視されていましたが、次第に教育や育成の重要性が認識されるようになり、「氏より育ち」という価値観が生まれました。これは、個人の努力や経験が人生を左右するという考え方を反映しています。

同じように育ちや環境の重要性を強調するものがいくつかあります。

  • 「鳶が鷹を生む」 平凡な親から優れた子供が生まれることを指します。家柄よりも育ちや才能が重要であるという考え方に通じます。
  • 「馬子にも衣装」 どんな人でも環境や装いによって立派に見えることを意味します。育ちや教育が人を形作るという考え方と関連しています。
  • 「人は見かけによらぬもの」 外見や出自だけでは、その人の本質は分からないという意味です。育ちや経験が重要であることを示唆しています。

 

もっと言えば「氏より自分自身」

「三つ子の魂百まで」という、幼い頃の性格や習慣は、大人になっても変わらず影響が長く続くことを示すことわざにも通じるところでもあるでしょう。

多くの人にとって無自覚かつ、記憶に残らぬままに、その後の人生を左右するほどに重要な人格、その中核的な要素を、マルセイユ・タロットの図柄は「女教皇」で示しています。

この札が逆位置で出るのなら、少々ひずみが生じている可能性があります。意識の上で分別がなくなっているのか、ものごとが道理を欠いている状況下に置かれているということもあるでしょう。心と身体のバランスを欠いているとき、独善におちいっているときによく出る札でもあります。そもそも善悪の定義などは信仰するものによって真逆になることもあるものです。

いずれにしても、この札を引いた人がわるいと言って出ているのではありません。

人の人格形成においては、「自己責任」で片づけられるものではないのです。

さりとて、どうしようもない過去を恨んでも、時計の針を巻き戻して過去にさかのぼることはできません。

思い出したくない過去にフタをしたところで一生ついてまわる過去なのだから、どんなに辛く、悲しい体験だろうとも一度向き合い、自分なりの決着をつけるということが大いにその人の役に立つ、といったことも忘れないでいただきたいこと―

過去の積み重ねで今があり、ここからまた何をどう積み重ねるかで将来が変わってくるのです。

長い人生の中で、一時期立ち止まり、自身の生い立ちや幼児期に立ち返る時間をもつ意義をぜひとも見出していただきたいものです。

 

深い自己理解

「自分自身を見つめ直す」とよく言われますね、「今の自分がどうしてこうなっているのか過去を振り返る」ということになります。

問題にぶつかったときの根本的な解決の仕方の一つでもあり、その過去を振り返るというところで、どこまでさかのぼるのか、その時その時の時期が論点かとも思われますが、徹底的に深く見つめなおすとなれば、やはり「出自(しゅつじ)」にさかのぼるというのが心理学的にも常道です。

なぜ、過去のさかのぼると、根本的な解決になるのでしょうか?

私たち自身の感情や思考パターンを整理できれば、また新たな自分で、再度スタートを切ることができるからです。

ただ単に再スタートを切ることは簡単です。ですが、同じあなたであれば、また同じつまづきが待っていることは大いに推測がつくことであり、道を変えても、なおもループのように「またか」と人生の旅路が停滞することはよくあることなのです。

ここで小手先の「自分を変えてみる」ことほど、おススメしないものはありません。たとえば、猪突猛進な牡羊座の方が、なまじ調和と平和なムードを大切にしながら周囲の皆とうまくやろうとしたところで、結果自己嫌悪におちいるだけかもしれません。

あなたはあなたの本質のままでいい。ただその感情や思考パターン、それがどこからきたものなのかをまず理解しよう。

通常人は多く、自身をコントロールしながら生きています。その司令塔の影の黒幕、深層心理に居るのが幼児期の私たちなのですね。

言動のどこからそれが来ているものなのか、心の奥の発動先に到達したときに、真の理解が生まれます。

どうしてこうなったのか、そんなことがあったんだね、だからこんな風に反応するんだね、嫌なんだね、悲しくなるんだね、好きになるんだね・・・そんな風に、幼児を包み込み理解を示す乳母のように、あなたがあなたを抱きしめてあげられるのです。

これまで一定になっていた自身の反応に変化が生まれます。おのずと、受け止め方、受け入れ方、否定を肯定にとまではいかなくても、ニュアンスが変わってきます。言動にゆとりが生まれます。

そうカンタンに傷つくこともなくなります。落ち込むあなた自身を、強くサポートすることもできるようになり、キャパシティに深みと広がりが期待できるのです。

本当に、感動的な変化を、人は人生で体験するものなのだと―タロットの展開を通して、依頼者が深い自己理解と心の癒しにつながった一例もぜひとも紹介してまいりたいものです。

 

より重要な女性の諸力

ひとつ、タロット第二の序列が示すことは、女性の存在が重要であるということ。

ここは大いに誤解を恐れずに、のびのびと語らせていただくよりほかないのですが、より重要な女性の力に希望を見出したいところです。

女性には女性特有の力があるということ。男女ともにこれだけカラダが異なるのですから、精神面でもそうとう異なるものをもっている私たちなのです。

男か女か、いずれかの性に由来する言動が取り締まりを受けているかのような今日この頃・・・こういった現象も、性同一障害の方が増えてきたことの一環なのかもしれませんが、筆者にとってはまだまだ「障害」というくくりで片づけるのは早すぎるのではという印象を抱くもの。

男女をまったく区別せずに、誰しもがたがいにニュートラルに接し合うなんて、それをどれだけの人が本当に望んでいるのだろう?

女性にも男性にも、どちらにも男らしさも女らしさもあっていい、それぞれの魅力、よさがあって然りなのでは?

ただ筆者も相当に、自身の心と身体が性についてことごとく対立しては痛めつけられた過去があり、悩める方の心理は痛いほど解ります。

自分を見つめる過程で、性別・性差を乗り越えることができたというのもまた大きかった、がしかしなかなか通常はここまではやはり難しいのかもしれません。運がよかったのでしょう。

ともあれ「女教皇」には、人の深層心理に働きかける力がある、そういう絵札だと言えるでしょう。

あくまでも象徴絵図ですから、実際にたとえば乳母を読むことはほとんどなく、では、何を読むのか?

「マルセイユ・タロット教室」のキーワードを見てみましょう。

  • 高度な霊性
  • 神聖
  • 神秘的
  • 高潔
  • 宇宙の律法書
  • 古きよき伝統

やはりこれらをどう広げるかという、ビギナーにとっては難所になりがちな課題も発生します。

ぜひ、マルセイユ・タロットで、タロット習熟&魂のブラッシュアップを!

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