ウェイト・タロットのリーディング例/オリジナル解説書より
展開する札の枚数が多いからと言って詳細且つ的確な回答が導き出せるとは限りません。質問に対して、一枚引きでも三枚引きで答えることもができる場合もあります。鑑定師は、質問内容とそれに相応しい展開法を見極めなければなりません。そのために最も見極めなければならないのは、質問者のニーズです。質問者の声をしっかり心で聞き入れて下さい。質問をただ耳に入れて、通り一遍の札展開を披露する……こんな光景が街角では見られる昨今です。札展開を決め、それぞれの札で何を読むかの詳細を設定するという一連の作業には知識と情報、応用力、感性をフルに使う必要があり、ある程度時間と労力を要するステップであるはずです
☆大三角形の秘法/トライアングル・スプレッド
札を三枚、スリーカード展開法のように、向かって左から右へ、時間の推移で変化する現状(①)と今後(②)の札を並べ、その二枚を結ぶ線を底辺として、二点の中央から垂直に線を引いたところを三点目の頂点として、三枚の札で正三角形を作るように配置します。一枚目で現状、二枚目で今後、三枚目が、一枚目から二枚目へと至る経緯についてのカギ=キー・カードになります。カギというのは、未来の扉を開けるためのカギ。どう使うかが至上命令。好ましくない未来を回避する方策とも、かみ砕いて言うことができます。カギは必ず正位(せいりつ)させ、正位置でひとつの指針として解釈します。
①で現状、②で今後、③で指針を解釈します。指針だけを導き出したいのなら、③の札だけを出せばよいことになります。ただし、一枚の札のみで相談者もしくは自分自身を納得させることは決してたやすいことではないでしょう。
【Tさんのご相談例】 Tさん(34才 女性)からの鑑定依頼
ご相談『昨年長女の誕生と、主人の独立・自営がいちどきに発生し、先々が不安です。娘が不自由なく安定した生活が送れるでしょうか?』
ここがポイント!
「わるい答えが出ていても、正直に質問者に伝えるのですか?」というご質問などお寄せいただくことがあります。ステラ・マリス・ナディア・オフィスのタロット解釈では、「よい、わるい」というとらえ方をいたしません。絵札が示す象徴的な事柄を、相談者個別の問題に沿って解釈し、表現した時に、「良い」「悪い」ということばはそう出てこないものです。よいかわるいかの二元性から脱しませんか!
☆タロットリーディングSample
現状の札からは、停滞期にあることが伺えます。これは、ある種周期的な波で、ご本人に必ずしも問題があるわけではないことを暗示する札です。どうかご自身を責めるようなことはなさらないで下さいね。 指針として、「塔」=抜本的な改革が求められていることがわかります。 仰るとおり心も身体も混乱を来すほどの激変の最中にあるわけですが、言ってみればこういう変化に飲まれずに、あくまでもあなたご自身が「変化を起こす」ことが重要です。 そう、主導権をもって、動いてまいりましょう。 抜本的な改革の時ですから、不安で気が重くもなるのも当然で、そうやすやすと進めないし、進みたくもないことでしょう。 「太陽」は、あきらめて自暴自棄になること、放棄、幼児性という側面もあるもので、まさに今のTさんがあきらめ、波に流されるままになっていくひとつの可能性とも推察できます。 どうかご自身の殻を破るつもりで、毅然とした姿勢で、この改革に取り組むご決意を。 またこの「太陽」からは、幼児、つまりHさんのお子様が中心になって本件が展開してゆく暗示だという取り方もできます。そもそも「太陽」は、太陽の日の光、恵みの象徴であり、逆位置ですので、期待通りというわけにはいかないでしょうが、今後については明るい希望的観測ができるというのもひとつの解釈です。何とかお子様を養っていけるだけの生活は確保できるのでしょう。 ただし、ではなぜ「塔」がアドバイスカードとして出ているのか? これがアドバイスであることを、忘れてはならないでしょう。楽観は禁物です。 占術で導き出される未来というのは、あくまでも現状の延長で発生し得る出来事です。現状を変えれば、未来も変わります。よりより未来のために、「太陽」の札に甘んじず、「塔」のアドバイスを生かし、抜本的な改革=意識改革を! 具体的には「ダメになるんじゃ……これから一体どうなるの?」と言う意識を、「自分はこうしたい、こうしてみせる!」という意識に変えることでは。だから、ヴィジョンを描いて下さい。たとえば家造りも、最初に設計・デザイン、そして土台作りありきです。 人が生まれ現実を生きてゆくということは、試練の連続です。不自由を体験することもあるでしょうが、そこをどう生きるか、お子さんに教えてあげることが本当の教育かもしれません。 娘さんの半生が関わるTさんとご主人とのご夫婦間の事柄です。どうか、勇気をもって確かな土台作りを。徐々に二階、三階とTさんご一家を構築されていって下さい。(了) |
タロット占いは一枚につき一問一答です。一枚一枚のアルカナに何を問うのか、一枚の札に対してひとつ質問を絞り込むことを「占的を立てる」と言います。また、占的=占いの目的 でもあります。 ここをしっかり定め、誰の何のための占いなのか?そこからまたブレないことが、明確なアドバイスを導き出すヒケツです。 では、次のステップへ!
☆六芒星展開法/ヘキサグラム・スプレッド札を三枚、頂点から時計回りに、正三角形を作るように配置してゆきます。今度はその正三角形に逆三角形を重ね合わせます。作った正三角形とは逆向きの三角形を作るように、天底から時計回りに三枚、最後に置かれた六枚に取り囲まれるように、七枚目の札を中央に配置します。最後に中央に一枚の札を配置します。それぞれの札の読み方の設定は下記の通りです。
(参考画像/国書刊行会マルセイユ・タロット教室より) |
では、実際のご相談とタロット解釈を見てまいりましょう。 |
【Yさんのご相談例】 Yさん(29才 女性)から
ご相談『外資系の会社に勤務。トレーナーとして配属になり、カスタマーサービス部門の教育指導に当たってして三ヶ月になる。現在、職場の直属の上司(50代女性)との関係に困窮。過剰な期待をされ、激務に追われるハメになっている。その間にいるアシスタントマネージャー(30代女性)の存在も、ことをやっかいにしており、自分が取締役や、人事担当の男性マネージャーと接点を持っていることをねたんだり、敵意を見せてくる。今は会社も過渡期にあるので、ガンガン自分を貫き前進していくか、上司や男性役員に伺いを立てながらしゅくしゅくと日本人的にやっていくべきか、それとも、この会社とは縁がないのか? 転職を考慮に入れたほうがよいのか?悩んでいます』
ここがポイント!ご相談者なりの二者択一を問われていますが、いわゆる「二者択一選択法」などは実践鑑定の中で仕事暦が長いプロ鑑定師にはほとんど使われていません。 どんなに複雑なお悩みであれ、ご相談者がどうすべきか?と一枚のキーカードに問う、これがタロット占術の奥義です。「~するべき」という心の持ち方は社会通念あまりよろしくないものともされていますが、あくまでもタロット目線でタロットがうながすメッセージを、相談者と鑑定師とでどう料理するか、これがタロット鑑定なのです。 |
ウェイト・タロット22枚による展開
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☆占的の確認① Yさんの過去・・・どんな状況下で今の会社に入ったのか?入り方に問題、その時点で何か問題がありはしなかったか? ② 会社におけるYさんの現状・・・Yさんが現状を語る「ことば」に対して、どのような象徴、意味合いをもった札が出るだろうか。 ③ 現状がどう変化していくか・・・②がどう変化させるか。変化をさせるのは、⑥であり、そこには⑤が密接に関係しているはず。 ④「転職」すべきか?伸るか反るか・・・「転職」を促す札とは? また、そうでない札がどれなのか、当たりをつけておくとベター。 ⑤ 会社・・・社会において、対するYさんに対して、どういうスタンスをとっているか?会社としての姿勢や内情を読み取るべきところ。 ⑥ Yさん自身・・・この札でもある程度の資質や適職を読むことができるものでもある。⑤と⑥の出目でいわゆる相性関係を読むことができます。 ⑦ Yさんと会社との関係性は?・・・ご縁がないのか、あるのか。ない場合とある場合の札がどれなのか、当たりをつけておくとベター。
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☆タロットリーディングSample
Yさんの過去において、ご自身の意志とは反した流れで、この会社に入社されたご様子が①過去「吊るされた男」からうかがえます。聞けば、Yさんは、大学卒業後、音楽関係の出版社に勤務するが、3年で退職。その後、某大手派遣会社に所属し、仕事をしながら語学の資格を取得。派遣で、外資系企業の事務、翻訳サポートなどを経験しているとのこと。 会社におけるYさんの現状②「女帝R」。仕事の割には給与が低いとか、熾烈な女同士の戦いが繰り広げられているようでもあります。ここでご相談内容に出てくる「上司」が、彼女いわく「仕事ができない割に威張っている」とのことで、目の上のたんこぶ的存在だということが判明。 今後の流れとしての「太陽」、この明るさと開放感からは、「独立自立」=今の会社から自由になることの暗示かもしれません。やや無邪気な対応で、後先を考えないまま動いてしまう可能性もうかがえます。 ここで⑥ Yさん自身「力」を確認しておきます。仕事に一本気合の入った力ある存在、熱い存在です。余力が感じられる一方で、今の職場では物足りなく、上司より自分のほうが力があるという自負があるのかもしれません。まだお若いですし、転職の方向性を押してみたいところにもなります。こちらがYさんの札であり、②は会社でYさんがどうなっているのかという状態であり、会社での人間関係や現場での様子を、あくまでも「状態」として解釈することに留意しましょう。 他方⑤会社は「死神」。冷たいイメージです。あまり繁栄しているとは言えない節もありますが、ここでは⑥Yさん自身「力」との相関関係が重要です。Yさんが職場で熱をもってがんばろうとしているのに対して、曲がりなりにもエールを送るスタンスではありません。女同士の戦いで辞める社員が出ようと引き留めることもなく、バッサリ、人を解雇することもあるでしょう。 ④キーカードは「正しい裁量を」と告げています。アグレッシブに前進していくというよりは、上司や男性役員に伺いを立てながら日本人的にやっていくべきなのでしょうが、ちょっとYさんに限界なのでは? 取り合えず、転職も視野に入れつつ「あくまでも大人の対応を」と強調したいところにもなります。雇用関係は一応の法的な契約です。辞職についての規定があるはずですから、ルールに則って動きましょう。規約に反した辞め方では、未払いの残業代など、頂くものも頂けません。職場が外資系とのことで、場合によっては法律家のアドバイスをもらうのが賢明です。 ⑦最終札「隠者」。ご縁は深く、哲学的なもの。後々ここでの経験は必ず生きてくるでしょう。一生の職場としては少々淡い印象です。隠者はランタンで会社とYさんの未来を照らしています。次のボーナスなど自身にとっての節目をめどに、ステップアップを兼ねた転職活動に動き出すのもおすすめです。(了) |
それでは、比較的多い男女間のご相談を大小のアルカナ78枚で占断したヘキサグラム展開法をご紹介してミニレクチャーを修了しましょう。
78枚を繰り出す場合の展開法は、ヘキサグラム展開法、ケルト十字展開法など10枚前後かそれ以上の札を出すものが妥当です。
展開法=スプレッドの選択は、その都度あなたの「観点」が何かによって、あなたが解釈しやすいものを決定すればよいことです。
何を使うかよりも、その使い方が肝心かなめ。
一枚引きやトライアングル展開法などは使用しないようにしましょう。できれば、22枚セットで使用するタロットと78枚フルセットで使用するタロットとを分けて用意していると鑑定もスムーズでおすすめです。
では、実際のご相談とタロット解釈を見てまいりましょう。
【Mさんからのご相談例】 Mさん(27才 女性)から
ご相談内容『交際中の彼のところへ、元彼女が転がり込んできて、同棲生活を始めたのです。彼は、彼女と男女の関係にはないし、仕事をなくして無収入になってしまった彼女を追い出せないと言います。確かに、彼はちょっと優柔なところがある優しい人ですから、そんな気持ちになることも、わからないではありませんが。本当に彼と彼女は、男女関係にないのでしょうか?この先どのくらい同棲を続けていくのでしょうか?2人の真実の姿が知りたいので、見て下さい。』
ウェイト・タロット78枚による展開
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☆タロットリーディングSample
貨幣の札が半数を占めているのも特徴的です。最終札の「貨幣の小姓」、あなたはどのように読むでしょうか?あくまでも一例ですので、参考にして頂ければ幸いです。 貨幣の札が半数を占めていることから、経済的な要素が強い関係だとも言えますが、通り一遍の読み方が染みついてしまうといずれ壁になります。本件はある程度確定的で、人間関係としては土台がしっかりしていたり、既に固まってしまっている要素があること、強く解釈すれば信頼関係があることなどもうかがえるのです。 Mさんの彼と、彼の元彼女の過去①「貨幣のACE(逆位置)」は、2人の関係が一度崩れた暗示ですが、経済的な問題がからんでいた可能性もあり、それがなければ続いていた含みも感じられます。②現状=今再び同棲状態にあるわけですが、「剣のACE(逆位置)」=厳しく、精神的な傷さえも暗示される札が出ています。やはり三角関係状態が心地よい人もそうそういないわけで、つまり、決して出来心によるルーズな性愛で結ばれているわけではない2人。一時の同棲ではなく、浮気ではなく本気。誰かが傷つき、撤退を余儀なくされなければならい、きびしい状態であることがうかがえます。 その結果、③今後には、彼との愛を成立させることができない女性「貨幣の女王(逆位置)」と、⑦結論として、彼との愛を成立させることができる女性「貨幣の小姓」の2者の札が出ています。 本件の主体である⑤元彼女と、⑥彼の関係性、即ち、「貨幣の4」「杯の4」の二枚の札をよく見るに、相性の良さ、安定性、類似性を見てとることができます。無収入になった彼女も蓄えはありそうで、彼なら自分を受け入れてくれるという一種のしたたかさにも。 よって、倒れた「貨幣のACE(逆位置)」を立て直し、改めて愛=確かな信頼を手にするのは、⑤元彼女である「貨幣の小姓」なのかもしれません。 つまり、彼と元彼女は同棲生活から復縁していく可能性があるわけですが、⑥彼はちょっと優柔なところがある優しい人。Mさんに希望をもってもらうには、ここは持久戦に入って、MさんにはMさんなりの本気の愛があることを、彼に伝え続けることでしょう。本気の愛ある女性がひとりの男性を手中に収める、という展開ですから、元彼女が、③今後の彼との愛を成立させることができない女性「貨幣の女王(逆位置)」になるよう、Mさんにがんばってもらうしかありません。 ④カギ、指針「杯の2」は逆位置ですから、Mさんにとっては「真実の愛」が重要であって、その相手はこの彼ではないという暗示である可能性もあります。 彼とのことは、Mさんの本命となる男性に至るまでのワンステップだと、伝えることもできるでしょう。鑑定師としては、前向きな解釈&表現力が求められるところとなります。(了) |
*変化するウェイト版 1909~2018
実際の初版は1909年ですが、再販を繰り返して現在に至るまでスタンダードな「ライダー・ウェイト版」として流通しているデッキは19010年版だと言われています。 こちら定番のウェイト版に対して、様々な改変版が登場しています。 |
*2009年のスミス・ウェイト版
2009年にU.S.Gamesが刊行した100周年=センテニアル・エディションが刊行されています。作画を担当した画家パメラ・コールマン・スミス女史へ、その功績に対するリスペクトが込められた記念盤。「スミス・ウェイト版センテニアル・タロット」などとも呼ばれています。スタンダードなウェイト版よりくすみのある灰色がかったノスタルジックなイメージで、柔らかい色彩です。こちらのほうがより原版の色彩に近いとのこと。
スミス・ウェイト版
*2018年のボーダーレス版
ボーダー=線、枠線をスミス・ウェイト版からなくしたのがボーダーレス版です。カードの淵、白い枠線がなくなった分、そこに隠れていた絵柄が表れてダイナミックな印象。
ボーダーレス版 |
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