1659年 ジャン・ノブレのマルセイユ・タロット
現存する最古のマルセイユ・タロット詳細
最も古いマルセイユ版
時代背景
パリの彫刻家でもありカードメイカーでもあったジャンもしくはジーン・ノブレ(Jean Noblet)の作品です。1659年の原版がフランス国立図書館に保存されています。このノブレだけが彫刻家とメイカー(販売元)を兼任していた唯一の存在であるとも伝わっています。
特徴
マルセイユ・タロットのカノンとして、唯一「皇帝」が右向きであることが実に不可思議かつ神秘的。
下図)ドダルのマルセイユ・タロットが示すマルセイユ・タロットのカノンと「皇帝」について
上段:ドダルのマルセイユ・タロットが一連のマルセイユ・タロットの「カノン」を示しています。
下段:左端がノブレ版、以降右側がドダル、コンバー、ジャック・ロシュ、カモワンのマルセイユ・タロットで、すべて「皇帝」は左向き。
上記の通り、ノブレ版より後の時代、1700年代に入ってからはマルセイユ・タロットの「皇帝」は一貫して左側(過去)に顔を向けている。
※上記のことは、1659年のノブレ版を最後に、タロットのカノンがおそらく確立されたのであろう可能性を示唆するものとなります。マルセイユ・タロットにおいては、図像、色、形、向きのどれについても踏襲すべき型があり、絶対的なものとされてきた経緯がうかがえるものです。自分の自由に好きなように描き表すことなどご法度だったのでしょうし、そのような発想をそもそもメイカーが抱くことなどなかったことでしょう。
フランス国立図書館に保存されている原版
この皇帝をよくよく見ていただきたい。できればガリカにて。
これは、このノブレ版において「皇帝の向き」についての議論、もしくは何らかの試行錯誤があったことの何よりの証でしょう。
古いタロットについての要点整理
※現存する最古のマルセイユ・タロットはジャン・ノブレ版
※現存する最古のタロットはヴィスコンティ・タロット
※現存していない(歴史の上でのみ語られている)最古のタロットはグランゴヌールによるシャルル6世のタロット。ある時期までエステンシ・タロットと混同されていたものでもある。
★2022年新しく水色が鮮明になったリニューアル版がタロットマスターズワールドのインターネットタロット美術館にて閲覧可能となっております。