反転する木版画、マルセイユ系タロットの絵柄の謎
いわゆるマルセイユ系タロットと言われる木版画タロットについては、版木の使用方法に問題があったことが指摘されています。
通常は版木にインクを乗せて、用紙に押し当てることで、版画は制作されます。
その場合、版木に彫られた線画と印刷された絵は左右反転した状態になるものです。
しかしながら、その版木を用紙に直に置き、線をなぞる形で紙に書き写し、その紙にステンシル彩色をほどこして作りあげたとして知られているのがジャック・ヴィヴル版です。
大アルカナは、22枚の内ほぼ半数が、伝統的な絵柄とは左右反対に仕上がっていることを、先のヴィヴル・タロットの項目でお伝えいたしました。※ヴィヴルと伝統的な木版画のタロットの並び=カノンについてはこちらから
ヴィヴルのタロットをアルカナⅠ~観ていけばもうお分かりの通りで、ことごとくマルセイユ・タロットのスタンダードとは一致しません・・・
ヴィヴル親方は、いったい、なぜこのような混乱を引き落とす版木の使い方をしたのしょうか?
一説によれば、当時はカードメイカーたちに重税が課せられている時代にあって、とくに版木の使用については、細かく規制があり、同じ版木を二度使うことが許されなかったとのこと。
デッキをひとつ作るたびに、版木を新たに彫刻しなければならず、その手間と納税の負担に策を講じるべく、メイカーの苦肉の策として版木を二次使用していたことが伝えられています。
なるほどー・・・でも、それなら何故、一部の札だけに、その節約の片鱗が見受けられるのでしょうか? とくに「6」~「9」の数字が振られている札が目立って反転している傾向なのですが。
今もってして解明されていない謎なのです。
確かに、ローマ数字のⅤ+〇 というところにその反転の軌跡が見られるわけではありますね。
ヴィヴル版 反転する「力」、「隠者」
たとえば下記、9と11のローマ数字が反転している「隠者」、「力」・・・、まるで当時の版画親方から、謎々をしかけられているかのよう。。
伝統を理解している人間からすると、「何これ?!」と文句を言いたくなる一方で、、非常に不可思議な、9と11の謎かけ遊び?なんて気持ちになる、興味尽きない絵柄になっていますでしょうか。
ブザンソン版 反転する「ジュピター」
反転する「ジュピター」 1700年代と1800年代
向かって左はフランソワ・エリ作、右は作者不明と言われているもの。
ブザンソン版 反転している小アルカナのローマ数字
ソードの6、7
コインの6~9の4枚
★ブザンソン・タロットのほぼすべての小アルカナにローマ数字が振られており、貴重な研究資料となっております。すべてインターネット・タロット美術館で公開中です☆
★ストリートアカデミーのタロット日曜美術館では様々なタロットの解説をご覧いただけます。