初版1788~1791年のアリエッテのタロット、通称エッティラ版

前回取り上げた1700年代のタロット・シーンとして最も注目したい項目のひとつが、アリエッテのタロット、通称エッティラ版/The Book of Thoth (Etteilla Tarot)です。

マリー・ルノルマン自身がそのセッションを受け、影響されて占い師を目指すきっかけとして挙げているのがこの「エッティラ」の存在です。

その人物像からお伝えしてまいりましょう。

ジーン・バティスト・アリエッテ(Jean-Baptiste Alliette, 1738-1791)

本名:ジーン・バティスト・アリエッテ(Jean-Baptiste Alliette, 1 March 1738 – 12 December 1791)

wikipediaはじめ、下記のちょっとわかりにくい画像が散見され、肖像画は残されていない可能性がありますが、イラストのダウンロード販売サイトから肖像画を購入してみました。いくつかアリエッテという画像名称ながらサンジェルマン伯爵の画像が検出されてくるのも特徴的ですね。。それについてはサンジェルマン伯爵の項で。

ジーン・フランセス・アリエッテのペンネームも知られているようです。

フランスはパリ在住の理髪師でありながら、カルトマンサーとしても人気の存在でした。

名前のアリエッテ/Allietteを左から読み「Etteilla: エッティラ」として、自身のタロットにタイトルを与えたというところが粋なセンスといいましょうか。

ややこしくならないよう本項ではこの方を「エッティラ」と呼ぶこととしてまいりましょう。

 

エッティラのタロットの特徴

コンセプトは「占星学との融合」

古代ギリシア伝来の四大要素、四つの体液の分類、および占星術的な対応から編み出された78のアルカナという、いわゆる「占星学との融合」がコンセプトでしょう。

カードは正位置・逆位置に加えて、横向きの場合というのも採用されており、さらに加えて、78枚の絵札すべてに、大小に関わらず通し番号が1~78まで降られています。絵柄の横にテキストで解釈を表示するという当時としてはえらいセンスではあったかもしれません。

しばしば欠損ありながらも1800年代の復刻版となるとオークションサイトで10~50万円越えだったり。

初版は1788年、もしくは1791年という説もありますが、ロスカラベオ社製ブックレットによれば、1783~ 1785年にかけて、エッティラは、「Maniere de se récréer avec le Jeu de Carte, nommées Tarots (タロットなるカードで自分を再生させるための方法) 」というタイトルの書物を5冊、オランダとパリで発表しています。

パリの書籍はフランス語、オランダのアムステルダムで刊行された書物はポルトガル語でした。

フランス語の方は追ってまた美術館サイトで。

ある程度幅を持たせた年代の中で数種のヴァージョンが存在していますので、イメージ・色合い・テイストもそれぞれ違っていますね、各々確認しましょう。

さらに、現在流通している主なるエッティラ版とは、エッティラの弟子など後世の人間によって1800年代に再販されたものの復刻作品なのです。オークションサイトでは出処要checkit!

 

別名として「エジプシャン・タロット」と呼ばれることなどがあるのも特徴でしょう。古代ギリシアに導入されたのは、そもそも古代エジプトの思想です。人気の高いエジプト神「書記神トート」にちなんで、「トートの書/ The Book of Thoth」というサブタイトルもつけられています。

一説によれば、かのアーサー・E・ウェイトがウェイト版の絵柄を考案する中で、最も参考にしたのがこのエッティラであるとも!

まさにタロット史上重要なデッキだというポジションも獲得しています。

 

大アルカナ22枚中、半数近くもの絵札が他のマルセイ版とは完全に異なるデザインになっており、マルセイユ版との違いが特に顕著なアルカナ15~19は独特の構図・・・不思議な絵柄は永遠の研究課題!

追って、インターネットタロット美術館やストアカのタロット日曜美術館でももちろん。

当面は大英博物館でごらんください。要所の抜粋は下記に😊

博物館番号1904,0511.50.1-78
Etteillaの78枚のトランプの完全なタロットパック、スペインのスーツマーク、および説明の小冊子。カードには各コーナーに番号が付けられ、水色の枠線で囲まれています。

手彩色リトグラフ、活版印刷 赤い模様
がプリントされた裏面 オリジナルボックス入り 19世紀初頭

プロデューサー名発行:Zリスモン
スクール/スタイルフランス語
製造年月日1800-1850 (circa) (circa)
産地掲載誌: Paris (France)

ヨーロッパ: フランス: イル・ド・フランス (地域): パリ (フランス)
ペースト ボード
技術リトグラフ手彩色凸版
寸法高さ: 高さ: 127ミリメートル幅:幅:78ミリメートル
 
キュレーターコメント元々は木彫りでしたが、この作品はリトグラフで印刷されています。刀の2つに「République Francaise 11 Avril 18(?)0″
場所展示されていません
取得名寄贈者:ミスEエストリッジ
取得年月日1904
部版画とドローイング
登録番号1904,0511.50.1-78
追加の IDその他の番号: その他の番号: F.21

当時のスタンダードであったマルセイユ版とはきわめて共通項が少なく、明らかにマルセイユ版には分類できません。

 

こちらは最も入手しやすいエッティラ版でしょうか

伊・LoScarabeo社製  The Book of Thoth (Etteilla Tarot)

ISBN 978-888395288-3   78 枚  サイズ– 66×120 mm

*五か国語英文ブックレット+日本語対訳付

☆当オフィスでも取扱い中☆ 「スカラベオ社のエッティラ版」と御用命ください。

しかしやはり趣きがあるのは、より初版に近いタイプの復刻版ですね!

市民層が豊かさを増す時代

仕出し商と種(タネ)屋を営んでいた商家に生まれたエッティラ。

少々さかのぼりますが

1500年代ヨーロッパでは商業革命が発生しています。ポルトガルがインド航路発見、その後、オランダが東インド会社を設立。スペインではコロンブスのアメリカ大陸侵出によって国中が大盛況となりました。インド貿易とアメリカ大陸貿易の2大分野が切り開かれたことは、イギリスの経済学者・神学者・哲学者であるアダム・スミス(1723-90)によれば、「人類の歴史に記録されたもっとも偉大でもっとも重要な2つの事件とされている程。

この頃日本にも1559年、 『天正カルタ』が流入しています。カルタとは、ポルトガル語:Carta(カルタ)に由来する外来語。他にも、楽器、タバコ、パンなど主にポルトガル、オランダを中心とした南蛮文化が広まっています。

西洋社会では着々と力をつけてきた商人が時代を主導するようにもなっていました。1700年代に入ると商人文化はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。エッティラがポルトガル語でタロット書を刊行していることなどから、相当裕福な家柄でよき教育をほどこされた紳士であったのではなかろうかと。

商人、工業の担い手が社会的地位を確立するとともに、商人を中心とした富裕層によって、それまでは宮廷のもの、貴族のみに許されていたような娯楽・芸術やファッション等々、ことごとく模倣され浸透していく流れの中で、カードゲームやタロットも広く社会に行き渡ったことでしょう。

エッティラは理髪師でしたが、もっぱら生計は占い、著述業で立てていたと言われており、当時はカルトマンシー流行りで、人気の占師でクライアントが後を絶たたないような存在だった可能性大です。

エッティラの理髪師=ヘアサロンは、単に彼の表の顔だったのかもしれません。サロンでの講義や執筆活動に明け暮れていた可能性は大きいのです。

1700年代は「マルセイユ・タロット」の一定のスタイルが確立されていく、いわば熟成期。

タロットは、占い、賭博、カードゲーム等色々なシーンで使用されてもいる次第でした。

 

カフェの流行

商人文化の花が真っ盛りなこの頃、パリではカフェが流行。

イギリスではコーヒーハウスやクラブ、イタリアではサロンといった社交場がいたるところに出没した時代です。日本では明治時代に入ってカフェの文化が到来。今をもって「お茶」「コーヒースタンド」は現代人にとって切っても切れない存在感です。

近世ヨーロッパにおいては一服する場所、アフター5を楽しむ場、社交の場として老若男女に愛好されながら、思想家や芸術家といったいわゆる教養人たちにとっては貴重な情報収集の場、ジャーナリズムを展開する場所でもありました。メールやインターネットがない時代ですからね!

ここで、このジャーナリストたちを相手に、近世のカルトマンサーたちが大活躍したのです。

とりわけ脚光を浴びたのがルノルマンです。彼女はかなり早い段階で、パリに独自のサロンを開いたと言われています。

「宮廷の魔女マドモアゼル・ル・ノルマン」のサロンは、フランス革命前に大繁盛!

革命の指導者ジャン=ポール・マラー、彼を支持したマクシミリアン・ロベスピエール、その右腕サン=ジュストらが彼女を訪れ・・・そして、ルノルマンがこの三名についての命運を見事に的中させたことが知られています。革命後、混乱する政変の中でマラーは暗殺され、ロベスピエール、サン=ジュストらは流刑・処刑。

ちなみに、ダリのタロットの剣の4にマラーの死が。ダリはスペイン出身の、一応公爵様。。

彼のことばで「フランス革命」を語る、そいういうイメージがこれらの絵柄になるのでしょうか。

ダリのタロットはインターネットタロット美術館にて!

※フランス革命についても項目を立てたいですね!

1800年代に入ると、タロット界は新たなエポックメイキングを迎えます。

つづく!

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